- 「MCACC(Multi-Channel Acoustic Calibration System)」は、世界初の自動音場補正技術として2001年9月に、パイオニアAVアンプのフラッグシップモデルである「VSA-AX10」に搭載されました。
1995年、業界に先駆けてドルビーデジタルプロセッサーSP-D07を発売以降、翌年にはDVDが登場。2001年当時、すでにAVアンプはホームシアターの中核として、ドルビーデジタル、DTS、THXといったディスクリート音声によるマルチチャンネル再生が当然のこととなっていました。
しかしながら、マルチチャンネル再生を行う上でスピーカーを正しく設置し、調整するには熟練の技能を必要とし、大きな課題となっていたのです。
- 作品に込められた想い。クリエーターの意図を正確に再現するために必要なことは何か。それは、その作品が制作された環境を再現することが最も良い方法であるといえます。
しかし、構造や形、広さもさまざま。また生活空間としてインテリアなども配置された一般の家庭において、マルチチャンネルスピーカーを理想の位置に正確に配置する。それはまさに至難の業と考えられていました。ですが、この壁を乗り越えない限り理想の再生環境を家庭で再現することはできません。
- マルチチャンネル再生の環境設定の課題をいかにして克服するか。パイオニアは英国のAIR Studiosをはじめ、米国のスカイウォーカーサウンド、国内では東京テレビセンターなど、世界でも著名なプロスタジオを数多く取材し、モニタリングの手法を学ぶことで、その解決法を見出しました。
それは、一流のスタジオエンジニアであってもモニタリングを行う際は闇雲に経験や勘に頼るのではなく、まずはじめに正確な測定を行い、そのデータに基づく調整を行うというものです。「MCACC」では、その手法をDSPにより自動化しました。スピーカー、部屋の形などさまざまな要素を高精度に測定し、客観的な基準となるデータをもとに音場を補正することで誰でも理想の再生環境を創出すること可能にしたのです。
- この「MCACC」の技術は、その後も残響特性に対応した時間軸補正を加えた3次元補正や高度な音響解析機能による定在波制御、クロスーバー周波数の自動判別機能など、より高度な音場補正を可能にするプロフェッショナルレベルの「Advanced MCACC」へと進化。マニュアル機能では自動設定のデータをリファレンス(基準)として気軽に好みの音場づくりを楽しめる他、最上級機には1mm単位のスピーカー設定を可能にする超高精度な測定機能も搭載。さらには、パイオニア独自のフェイズコントロール技術と融合し、極めて正確な再生環境を実現する音場補正技術として多くの人々から格段に高い評価を受けていることはいうまでもありません。
そして、このパイオニアの「MCACC」の誕生を契機に、他メーカーにおいてもさまざまな形で音場補正を実現する機能が登場。今や音場補正の自動化はAVアンプの世界標準の技術となっていることは、ホームシアターファンなら誰もが知るところです。