- 2001年、世界初の自動音場補正技術「MCACC」をAVアンプに搭載して以来、パイオニアはマルチチャンネル再生の理想を追求するアプローチとして、プロスタジオのモニタリング手法を忠実に再現することで、その目的を達成することを目指してきました。
しかしながら、オーディオフォーマットがより高品位に、より多チャンネルへと進化を続ける中、理想の再生環境を実現するだけでは、AVアンプとして最も基本的な性能である多チャンネル同時駆動能力に対する課題をクリアすることはできませんでした。その最も大きな要因となったのが放熱設計の限界です。
- 例えば、ドルビー TureHDやDTS-HDマスターオーディオのように、オーディオフォーマットは高品位になるほど正確なスピーカー設定はもちろん、その高密度なサウンドを忠実に再現するために高い出力性能が求められます。
しかし、一般の家庭に設置することを前提としたAVアンプに許された筐体容積の限界はごく限られたものとならざるを得ません。そこで従来のアナログA、AB級の技術のまま、いたずらに出力性能を上げようとすれば放熱設計に限界が生じ、さまざまな回路に悪影響を及ぼすこととなります。
ならば、限られた筐体スペースのまま放熱を最小限に抑え、より高効率な出力変換を可能にするにはどうしたら良いのか。その方法としてパイオニアが選択したのが、「アナログClass D」という新たな手法でした。
では、アナログClass Dとは、どのような手法なのか。最大の特長は、アナログ-PWM変換を採用したClass D方式(アナログデジタルアンプ)だということです。少々技術的な説明になりますが、デジタル-PWM変換方式を採用したフルデジタルアンプでは、マスタークロックの周波数により最小分解能が決定(有限値として設定)されるという音質面での大きな課題があります。しかし、アナログClass D方式では信号情報はHI-LOWの2信号によりパルス幅長へ変換されるので、その分解能は無限大でアナログA、AB級の信号と変わりません。言い換えれば、アナログClass D方式は、オーディオ信号のクオリティを損なうことなくClass D方式の高効率化というメリットが享受できるという大きな利点があります。さらに、Class D方式は音の立ち上がりの良さ、レスポンシィビリティという面でも極めて優れており、アナログA、AB級と比べてサウンドクオリティの面でも大きなアドバンテージがあります。
2008年2月、SC-LX90はそのアナログClass D方式という革新的な技術を採用した「ダイレクト エナジーHD(High fidelity class D)アンプ」を搭載し、ハイエンドオーディオとしてのクオリティをそのままに、10ch・1400W同時出力という画期的な高出力性能を獲得。マスターサウンドの感動をありのままに再現するというパイオニア独自の思想「Advanced Multi-Channel Stereophonic Philosophy」を実現するためのさらなる進化を果たしました。
- パイオニア独自のClass D方式による「ダイレクト エナジーHDアンプ」が実現したアナログの限界を超える出力性能。その高音質・高効率化の技術は、パワー素子の持つポテンシャルをさらに引き出すよう年々ブラッシュアップされることで、さまざまなパーツや回路設計に関する技術的な深化を果たしていきました。
そして2011年9月、SC-LX85/SC-LX75に搭載された新型「ダイレクト エナジーHDアンプ」では、新たなパワー素子「Direct Power FET」を採用。さらなる高性能の領域へと進化する可能性を切り拓きました。
「Direct Power FET」は、半導体内部のワイヤーボンディングやリード線を排除し半導体チップを基板に直結するシンプルな構造とすることで、ヒートシンクのより一層の小型化や、回路構成の簡潔化による伝送経路の短縮化を実現。信号伝送のクオリティを高め、パイオニア独自のダイレクト エナジーHDアンプならではの高音質・高効率・省電力化のさらなる向上に貢献しています。
そして、最新のSC-LX87/SC-LX77のAIR Studiosでのチューニングセッションでは、SC-LX90を超える衝撃を受けたと賞賛されるサウンドクオリティを実現しています。